ひとの気持ちが聴こえたら:私のアスペルガー治療記

読書

どうもミトコンドリオンです。

人間関係って難しいですよね。

良かれと思ったことが、相手にとっては不愉快になったり、

相手が自分の思ったようなことをしてくれなくてイライラしてしまったり、

時々、相手の考えていることがわかったら、どれだけスムーズにことを運ぶことができたら、と思うことってありませんか。

たいていの人は、相手の意見を聞かずとも、表情や口調で相手の意見とまではいきませんが、雰囲気を読み取ることができると思います。

一般的に、「気の利く人」と呼ばれる人です。

私は、あまり気の利く人間ではないようで、相手の意にそぐわないことをすることが多い認識です。

まぁ「思いやりがない」と言われることもあり、自分ではそんなことはないと思っていたので、よく凹みます。

こういうことがよくあると認識しているところに、本書の存在を知りました。

そこで、今回は「ひとの気持ちが聴こえたら:私のアスペルガー治療記」をご紹介したいと思います。

タイトルからすると、小説のようで、フィクションかと思われるかもしれませんが、正真正銘のノンフィクションになります。

著書自身が自閉症の一つであるアスペルガー症候群で相手の気持ちを察することができないのですが、ある研究に参加することで、一時的にですが、人の気持ちを表情等から読み取ることができるようになった経緯が書かれています。

書籍情報

ひとの気持ちが聴こえたら:私のアスペルガー治療記

著者

ジョン・エルダー・ロビソン(John Elder Robison)

訳者

高橋知子(たかはし・ともこ)

ざっくり内容

治療(研究)への経緯

著書自身であるジョンは自身が自閉症であることを数年前に知り、今までの生きづらさの原因を知ることができました。そして、自分を理解したことで、自閉症の方へ向けた勉強会へ参加していました。

ジョンは自動車修理会社を経営しており、自閉症でありながらも、成功している人物として、注目されています。

そんなジョンは、ある神経科の研究者と知り合い、彼らが自閉症の改善を目的として、脳に電流を流して治療する研究に参加することになります。

脳に電流を流すというと、電気椅子のようなものを思い浮かべるかもしれませんが、違います。

脳の神経回路は微弱な電気信号あるため、外部からの微弱な電気を送り、脳の一部を活性化させるといった研究です。自閉症とは脳の一部の回路が正常に作動していないために起こるとされており、仮説では電気を送ることによって、眠っていた回路を作動させ、自閉症の治療につなげようということです。

1回目の電気刺激後

1回目の刺激後、ジョンには明らかな変化が起こりました。

それは、音楽に感情あることがわかったことです。今まではただの言葉である「歌詞」、音の並びである「メロディー」としか認識しておらず、メロディーに関しては正確かどうか、どんな機材を使用しているのか等にしか注目していませんでした。

しかし、電気刺激を受けた後に音楽を聴いたところ、過去の記憶が蘇り、あたかもその場にいたかのような感覚になったようです。

また、曲が持っている感情を受け取ることができ、涙を流したそうです。

その他にも変化がありました。

それはタイトルにもあるように、人の気持ちが分かるようになったことです。

分かるというと、魔法のように思われますが、正確には相手の表情等から察する能力が飛躍的に向上しました。それにより、仕事でも交渉でもうまくいくようになります。

しかし、この現象は永遠に続くことはありませんでした。徐々に能力は低下し、最終的には少し感情が分かるくらいにまで低下したそうです。

他の参加者は

他にも参加者は多数いるのですが、私が個人的に印象に残っているのは自閉症の少年です。

彼は自閉症のため、学校でも孤独で閉じこもっている少年でした。

しかし、電気刺激を受けたことにより、学校でも自発的に行動するようになり、クラスにも溶け込むことができるようになります。

しかし、ジョンと同じく、徐々にその能力は低下していき、最終的には刺激を受ける前と同じく、閉じこもってしまう性格に戻ってしまいます。

ジョンのその後

人の気持ちを読み取る能力が衰退しても、ゼロになることはありませんでした。

研究者によると、電気刺激により今まで開通していなかった神経回路が開通したため、能力がゼロにはならなかったそうです。

そのため、ジョンは今までよりは気持ちを読み取ることができ、生活も変化していきました。

しかし、その変化はメリットだけではなく、デメリットの方が多かったようです。

まず、奥さんとの関係がギクシャクしていきます。当初から奥さんは鬱症状があり、ジョンは自閉症のため、その鬱状態を把握することをしていませんでした。

しかし、気持ちが読み取れるようになったから、奥さんの鬱状態がジョンにも感じられ、一緒にいることが苦痛になってしまったようです。

それにより、ジョンと奥さんは離婚してしまうことになります。

また、デメリットとして、過去の記憶がどんどん悪い記憶に置き換わってしまうことでした。

これは、過去を思い出すたびに、相手の気持ちがわかってしまい、「あの時、あの人はこう思っていたんだな」と落ち込むことが多くなったそうです。

当時は相手のことは特に気にしていなかったため、自分自身の感情のみを感じていたのですが、今になって相手は嫌な気持ちになっていたと分かってしまい、どんどん良い思い出がなくなってしまいました。

その後も、この経験を活かし、再婚したり、新しい研究への参加を表明したりしています。

個人的感想

最近、Youtubeで岡田斗司夫さんの動画を見ていた時に、「アルジャーノンに花束を」の現代版ということで紹介されていたため、早速読んでみました。

アルジャーノンに花束をは小説なので、フィクションなのですが、本書は著者自身の体験記であり、実際に起こったことだと思うと、私自身も興味を持ちました。

しかし、今回の電気刺激である経頭蓋磁気刺激(TMS)は一時的には効果があっても、徐々に効果がなくなっていき、アルジャーノンに花束をと同じように、能力が衰退していく時の喪失感には耐えられないかもを感じています。

自閉症はある種の特性であり、それにより、別の分野の能力が高かったりします。そのため、TMSにより、その能力が失われるリスクもあるため、どっちが良いのか私自身も考えるところがありました。

私も人の気持ちを分かっていないとよく言われるため、興味を持ちましたが、経頭蓋磁気刺激(TMS)により感受性が豊かになりすぎたせいで、心が休まる時がなくなってしまったら元も子もないとも思いました。

現在では、鬱病等の治療の一環として経頭蓋磁気刺激(TMS)は導入されているようです。

しかし、上記のようなリスクがあるため、一般的に普及するには様々な問題を解決しないと難しいのではないかと個人的には考えています。

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