どうもミトコンドリオンです。
書籍情報
オインカン・ブレイスウェイト
1988年ナイジェリア生まれの作家、詩人、グライックデザイナー。英国キングストン大学卒業。デビュー作の本書は有力紙誌から高い評価を受け、30言語での刊行が予定されている。
訳
粟飯原文子(あいはらあやこ)
法政大学准教授
訳書
『ぼくらが漁師だったころ』チゴズィエ・オビオマ
『褐色の世界史』ヴィジャイ・プラシャド
『ゲリラと森を行く』アルンダティ・ロイ
『崩れ行く絆』チヌア・アチェベ
他多数
ナイジェリアの大都市ラゴスに母と妹とともに暮らす看護師コレデ。几帳面な性格の彼女は、妹アヨオラが犯す殺人に悩まされていた。快活で誰からも好かれる美人のアヨオラは、なぜか彼氏を殺してしまうのだ。もうこれで三人目。これでは妹を守るために犯行の隠蔽を続ける一方で、昏睡状態の患者にひそかに心中を打ち明ける日々を送っていた。しかし、警察の捜査の手が姉妹に迫ってきて……。全英図書館賞、アンソニー賞をはじめとしたミステリ賞四冠に輝きブッカー賞候補ともなったユーモアと切なさに満ちたミステリ。
あらすじと感想
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ねえコレデ、殺しちゃった。と言ってアヨオラはわたしを呼び出す。
そんなセリフ、二度と聞きたくなかったのに。
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この本はこの文章から始まります。
タイトルが訳すと「私の妹、連続殺人鬼」なので、非常に衝撃的で、どんな話?と思って読んでみました。
ざっくり内容と感想です。
姉のコレデは誰にでも好かれる妹のアヨオラを守らなきゃという気持ちと、なんでも上手くいく妹への嫉妬の気持ちを持ちながらも日々を過ごしている。
勤め先の病院では医師のタデに思いを寄せているが、アヨオラが病院を訪ねてきたことのより、タデとアヨオラが急接近して、恋人関係になってしまう。
コレデはアヨオラの殺人のせいで、死体遺棄という犯罪を犯しているのに、意中の相手までも奪ってしまうアヨオラに嫉妬と敵意を持ってしまう。
しかし、過去の父との出来事から妹を守らなければという気持ちもあり、その葛藤が読んでいても伝わってきます。これは妹や弟がいる人にとって、似たような思い当たる節はあると思うし、共感できるシーンではないでしょうか。
私にも下の兄弟がいるので、何かと気にかけてしまう節がありますし、下の兄弟が可愛がられたり、自分より物事が上手く進むとうらやましく思うこともあります。
そんなことで、姉のコレデの心理描写には共感することができました。
逆に、自由奔放な妹アヨオラに対しては、彼氏をなぜか殺してしまうという謎。警察や被害者家族から疑われないように悲しんでいるように演じなければならないのに、深く考えず、SNSに投稿しようとしたり、何を考えているのか分からないのでモヤモヤがずっとありました。アヨオラはアヨオラなりに過去の体験がトラウマになっているらしいのですが、それにしても考えが浅いのか、それも見越した行動なのかもわかりませんでした。
殺人や昏睡状態の患者など、日常とはかけ離れた設定の話なのですが、なぜか共感できた理、感情移入できてしまいます。それは登場人物の心理描写が家族の絆や嫉妬、差別、患者家族の闇などで、どこか自分に当てはまるからではないかと感じています。
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